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雪富千晶紀『死呪の島』──てんこ盛りJホラーの決定版──

  • 2019年8月7日
  • 2021年8月22日
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今回ご紹介するのは連日の猛暑にぴったりなホラー小説、2014年の日本ホラー小説大賞を獲得した雪富千晶紀さんの『死呪の島』です。

死呪の島

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あらすじ

周囲を海に囲まれた孤島“須栄島”にかつての豪華客船シー・アクイラ号が沈没船の状態で漂着する。代々島を治めてきたきた白波家の二男、高校生の白波杜弥(しらなみもりや)は町長である父とそれを補佐する兄の手伝いに駆り出される。彼の友人でオカルトマニアの綿積徹(わたつみとおる)は個人で調査に乗り出すと意気込む。時を前後して杜弥が想いを寄せる村八分、もとい島八分の少女椰々子(ややこ)の元には不吉な神託が下る。巻き起こる怪異、そしてそれを引き起こした元凶とは……折り重なる謎と怪異が一つに重なった時、最後の〈災い〉が島にやってくる……閉鎖的環境の中で蔓延する恐怖を描いたホラー・サスペンス。

感想(一部ネタバレあり)

物語の構造が散らばりつつクライマックスに丁寧に収束する。ホラーの側面は薄めだが、ミステリとして読んでも楽しめる。割とおカタいジャンルながら、凝り固まらずエンタメとしても読めるのは好印象、しかし、タイトルにも書いたように「詰め込み過ぎ」なのが気になる。

序盤から中盤にかけての島の伝承に沿っての怪異の展開は近年ネットで流行っている「田舎モンスター系怪談」のようですんなりと楽しめる。「顔取り」や「さいもちひの神(変換できない)」など、短編のように綺麗にまとまっていて怪異一つ一つをとっても秀逸な出来、しかし謎解きが進んでいくにつれて物語はあらぬ方向へ……これらの怪異はブードゥー教の術に共鳴して起きていたのだ! ってオイ、と突っ込みたくなるがツッコミどころは後述、それでも最後の〈災い〉として死者の軍勢が浜から上がってきて島民を襲うシーンからクライマックスは一種パニックホラーとして絶望感と迫力がある。

そこまでミニマル且つスマートにまとまっていた分、いきなりぶち込んできた感とややチープさを感じざるを得ないのは残念なところだが、色々と散らかしたのを最後に綺麗にまとめてハッピーエンドで仕上げてきたのも筆力のなせる技か、最終的にジュブナイル、とまでは行かないものの青春小説的な仕上げになるのも個人的にはやや残念、てんこ盛りを上手く丼の中には収めたが、はみ出た海老天の部分が美しくない、そんな作品、文句なしで80点以上はつけたいが、90点となると悩むと言うのが小生の評価、面白いし楽しめますが……。

ツッコミどころ

日本の怪異として閉鎖環境離島ホラーのまま済ませておいてくれれば良かったのに、怪異を活性化させているのがブードゥーの呪いとはいかに、バロン・サムディ、グリグリ、セージ、死蝋と呪術のガジェットの導入と必然性の担保についてはいいのだが、遠く日本の小島まで届く呪いって強すぎないか? その辺の話の絡め方がやや雑というか強引、分かるけどさぁ……みたいな、考えなければ楽しめる。サスペンスと悲しき呪術の媒体となった赤子のエピソードを挟まず、スマートに周期的な怪異を描いても良かった。

あとは死者の軍勢のシーンもややお笑いどころか、海で死んだ人が海流で流れ着く島とは言え、それに肉体を与えるのが日本で古来から消費されてきた「魚」たちの怨念というのはいかに……お前はヴィーガンかと、主人公たち島民でもギリギリ倒せるモンスターの造型としてはありよりのありだが、魚か……タハハ……みたいなやや乾いた笑いが漏れてくる。

魚特有の生臭さや不気味さの描写が上手い分、魚にしてももう少しうまくやれたのではないだろうか、流石に島を魚が取り囲んだかと思いきや集まって人型になるより、臓物を引き裂かれ、身体をズタズタにされた魚が島を取り囲む海中に浮かび、死者が肉体を「奪って」現れる方がパニックの規模と日本的な怪異譚としての仕上げには向いている気もする……

あと島八分だったはずの椰々子がただ一人杜弥のことを想って戻ってくる展開も青春小説的にはありだが、いや、戻ってこうへんやろ、みたいな、そんで島民はスタンディングオベーションで迎え入れるとか、お前ら総頭ン中パープリン組かとツッコミを入れたくなります。根本的な問題も解決していないのに、これからは島民みんなで力をあわせて怪異と戦おう! 俺たちの戦いはここからだ! 次回作にご期待ください! みたいな。

総じて、エンタメと割り切れば気にならないけど、ツッコミ入れたらきりがない感じですね。

まとめ、力を抜きつつホラーしたいあなたにおススメ

まぁ、色々言いましたが、面白かったですよ。楽しめました。ただもっとゾクゾクしたかったので、今度は「わざと忌み家を建てて住む」でも読もうかな、なんて。

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