ダウンカントリーMTBがアツいのは知ってるけど、それってなに? って話から
このところよく聞くようになった「ダウンカントリーMTB」というワード、なにやらクロスカントリーバイクがフルサスになったらしいが、そんなのワールドカップが過激なコースになったからじゃないのか? とか、オールマウンテンバイクの軽いやつだろ、とか喧々諤々な感じです。
小生も正直どれがフルサスクロカンレーサーでどれがダウンカントリーなのか区別がつきません。
ダウンカントリーMTBのルーツと定義を見てみよう
というわけで詳しい解説をしてくれている記事を翻訳してみました。
マウンテンバイクのカテゴリーは、ほとんどの場合、確立されています。
例えば、クロスカントリーマウンテンバイクの定義は、ほとんどのマウンテンバイカーが知っています。エンデューロマウンテンバイクというカテゴリーも、ここ8年ほどの間に本格的に普及したもので、今では基本的に常識となっています。
とはいえ、マウンテンバイク業界に変化はつきものです。
今ではクロスカントリーバイクと呼ばれているものも、80年代や90年代には想像もできないものでした。エンデューロは、最高の電動マウンテンバイクを除けば、おそらく業界を定義する最新の変化です。
新しいバイクが生まれた、というよりもむしろ、新しいレース種目のおかげで、ロングトラベルでシングルクラウンのバイクが再定義されたものと言った方がいいでしょう。
そして、本題に入りましょう。
最近のマウンテンバイク界に注目している人なら、だれでも一度は「ダウンカントリー」という言葉を聞いたことがあるでしょう。
そもそもダウンカントリーとは何か?
ダウンカントリーとは、ダウンヒルとクロスカントリーが合体したような言葉ですが、この新しいバイクは、ダウンヒルバイクよりもクロスカントリーバイクのDNAに近いものがあります。
ざっくり言ってしまえば、ダウンカントリーバイクとは、クロスカントリーバイクをよりトレイルでの使用に適したように改良したものです。
純粋なクロスカントリーレーサーとトレイル用マウンテンバイクの境界線を曖昧にしています。
これを可能にする主な特徴は2つあります。それは、最新のジオメトリーとコンポーネントの選択です。
これらのバイクの技術的な詳細を説明する前に、このトレンドがどこから来たのか、数年前を振り返ってみるとよいでしょう。
ダウンカントリーMTBのルーツ
クロスカントリーバイクは伝統的に保守的なデザインで、登り坂やスムーズなトレイルでの効率性を重視しています。
しかし、この10年間で、クロスカントリーレースのコースはますます難しくなり、バイクやライダーに求められるものも大きくなってきました。例えば、この時期には29インチホイールやフルサスペンションバイクがほぼ全面的に採用されています。
それと同時に、エンジニアたちは、トレイルバイク、エンデューロバイク、ダウンヒルバイクのジオメトリーを変更することで、より良く、より速くする方法を学んでいました。
Mondrakerは、長いリーチと短いステムを組み合わせた「フォワード・ジオメトリー」でこのトレンドの火付け役となったと言われています。これにより、より長く、よりスリムで、より地面に近いバイクが誕生したのです。
この2つのトレンドが加速する一方で、ショートトラベルのクロスカントリー用プラットフォームを使用しながらも、従来のレースバイクとは大きく異なる乗り方をするバイクが登場し始めました。
当初は誰もその呼び名を知りませんでしたが、やがてダウンカントリーという呼び名が定着していったのです。
私たちが知る限り、ダウンカントリーという名称を最初に使ったのは、Pinkbike.comのMike Levy氏です。
レヴィは2018年のコラムで、ダウンカントリーバイクを
クロスカントリー、トレイル、そしておそらくはオールマウンテンのセグメントを融合した、奇妙で定義しがたいマウンテンバイクの新興カテゴリー
と定義しました。彼は2013年に発売されたKona Process 111 DLを、純粋なXCバイクよりも高速セクションやテクニカルな地形を快適に走れる、ショートトラベルのフルサスペンションバイクの初期の例として挙げています。
そこから早数年、今やダウンカントリーは業界に浸透し、正式なバイクカテゴリーになりかけています。
信じられませんか? トレックのようなビッグブランドでさえ、このトレンドに乗じて、ウェブサイトにダウンカントリーのページを設けています。
トレックはこう考えています。
もしあなたが、効率的でパーティーに最適なフルサスペンションMTBを求めるなら、ダウンカントリーマウンテンバイクが必要です。トレイルバイクの魂を持ったXCバイクであり、軽くて速いだけでなく、激しい下り坂や険しい地形をワイルドに楽しむことができます。
ダウンカントリーバイクとクロスカントリーバイクは何が違う?
さて、ダウンカントリーバイクは、通常のクロスカントリーバイクと何が違うのかを見てみましょう。
ちなみに、フルサスのクロスカントリーバイクの一例として、BMC Fourstrokeがあります。東京オリンピックでは、トム・ピッドコック選手が乗って金メダルを獲得したばかりの自転車です。
Fourstrokeのヘッドアングルは67.5度、リーチは465mm、ホイールベースは1,180mm(Lサイズ)となっています。前後とも100mmのトラベルを備えています。
現在、人気のあるダウンカントリーバイクのひとつが、スペシャライズドのEpic EVOです。
Epic Evoは、通常のEpicと同じジオメトリーを採用していますが、Evoモデルではフロントに120mmフォークを採用しています。トラベルが増加したことで、ヘッドアングルは66.5度となり、通常のEpicよりも1度緩くなっています。ヘッドチューブが傾斜していると、特に高速走行時の安定性が向上します。
しかし、Epic Evoのレビューにもあるように、ジオメトリーの面では最も先鋭的なダウンカントリーバイクとは言えません。
120mmトラベルのNS Synonym TR 1は、ヘッドアングルが66度、リーチは490mmまで伸び、一部のエンデューロバイクよりも長くなっています。
ジオメトリーは重要ですが、間違ったコンポーネントが取り付けられていると意味がありません。
まず第一に、ダウンカントリーバイクには少なくとも120mmのフォークトラベルが必要です。
現在、ロックショックスのSIDやフォックスの34ステップキャストなどのフォークが人気を集めています。
ダウンカントリーに適したタイヤの種類は様々ですが、重要なのはリムとタイヤの幅が従来のXCバイクよりも広いことです。
タイヤの幅は2.3~2.5インチ程度で、フロントには太めのタイヤ、リアには転がりの速いタイヤを組み合わせると良いでしょう。
ダウンカントリーバイクの良し悪しを決める要素は、ドロッパーポストです。
最高のドロッパーポストは、下り坂やテクニカルセクションでサドルが邪魔にならないようにしてくれるので、ハードな地形でも自信を持って走ることができます。ダウンカントリーバイクは、通常のXCバイクよりも下り坂を速く走るように設計されているので、ドロッパーポストがこのカテゴリーの鍵となります。
また、より積極的な下りに対応するために、より強力なブレーキか、少なくとも大きなブレーキローターを備えている必要があります。幅広のハンドルバーと短いステムも、ダウンカントリー用のジオメトリーとこれらのバイクの意図に沿ったものです。
終章:ダウンカントリーバイクはMTBの未来か?
マーケティングで何を言われていようと、ダウンカントリーバイクにはトレードオフがあります。
これらのバイクはあくまでもクロスカントリーのカテゴリーに属するため、荒れたダウンヒルでは最高のトレイルバイクに匹敵することはできません。
速い下り坂や適度にテクニカルなトレイルでは速く走れることが期待できます。
しかし、ロックガーデンでブラインドハッキングをしようと思っても、安全面からほとんどおすすめできません。
重量も考慮すべき点です。多くのダウンカントリーバイクはレースコースを走るのに十分な軽さですが、ダウンヒルのために頑丈なコンポーネントを選択すればするほど、バイクは重くなっていきます。
とはいえ、ダウンカントリーバイクは、トレイルやエンデューロ用の頑丈なバイクよりもはるかに軽量であることがほとんどです。
ダウンカントリーバイクは、より長い距離を走るトレイルバイクやエンデューロバイクの代替品として最適です。多くのマウンテンバイカーにとって、180mm以上のトラベルを持つエンデューロバイクは必要ありません。そのようなバイクにもメリットはありますが、優れたジオメトリーとコンポーネントを備えた120mmのバイクの方が、多くのトレイルの状況でより速く、より効率的であるという事実を避けることはできません。
様々なタイプのマウンテンバイクを選ぶ際には、やはり地域性やライダーの意図が重要になります。
山頂まで重いバイクを漕ぐことを気にしない人もいれば、Stravaのタイムを狙うために軽量なバイクを求める人もいます。
ダウンカントリーバイクは、自転車業界の進化の表れです。
トレイルバイクがますます高性能になっていく中で、ダウンカントリーバイクは自然と生まれた隙間を埋め、ただシングルトラックやトレイルを走りたいと思っている幅広いライダーに大いにアピールしています。
クロスカントリーは決して人気のないスポーツではありませんが、ダウンカントリーバイクはそれをクールなものにし、将来のトップレーサーをこのスポーツに引き込むのに役立つことは間違いありません。
私たちにとって、技術開発は見ていてとても楽しいし、消費者の選択肢が増えることは良いことだと思います。
つまり、日本のトレイル事情にベストマッチってこと?
個人的にはこんな感想を受けました。
日本のトレイル事情的にはよほどなところやゲレンデコースにでも行かないかぎりエンデューロバイクまでは要りません。
なんか最近はトレイルMTBのサスが滅茶苦茶長くなってきちゃってて、エンデューロバイクとの境目が分かりにくくなってきているところではあったので、ダウンカントリーMTBの登場は喜ぶべきだと感じます。
以前乗ったことのあるバイクだと、XCバイクではありますが、SuperCaliberなんかは「これ系」のニオイがします。トレイルバイクじゃなくてもトレイルを「楽しめるバイク」です。
TREK super caliber 9.7の試乗インプレ~東京五輪女子クロスカントリーを制したMTB~
ダウンカントリーMTBとして販売されているバイク
ついでなのでダウンカントリーバイクとして販売されているバイクをいくつかご紹介しておきましょう。
日本でのムーブメントに火をつけた? CANYON LUX Trail
最近いろんなところでよく「ダウンカントリー」って聞くようになったのは確実にコイツのおかげです。
https://www.canyon.com/ja-jp/mountain-bikes/cross-country-bikes/lux/lux-trail/lux-trail-cf-8/3018.html?dwvar_3018_pv_rahmenfarbe=BU%2FBU
やっぱり本場はアメリカのTREK TopFuel
SuperCaliberもちょいフルサスでアツかったけど、やっぱりダウンカントリーには足りなかったみたいで出てきたのがコチラ。
https://www.trekbikes.com/jp/ja_JP/%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AF/%E3%83%9E%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AF/%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AF/top-fuel/top-fuel-9-9-xx1-axs/p/35326/?colorCode=yellow_red
スペシャからはEpic EVO
ジオメトリーはクロカン寄りのため、欧米専門誌でも?を付けられていることがありますが、ダウンカントリーバイクとして楽しめる一台。
https://www.specialized-onlinestore.jp/shop/g/g94822-3002/
Rocky MountainのElementなんかもいかが?
日本ではややマイナーだけれども、本場のMTB感がビンビンに漂ってくるロッキーマウンテンからはコチラの一台をご紹介しておきます。
https://aandf.co.jp/brands/rocky_mountain_bicycles/catalog/2022/element#element_a30
まとめ:日本のMTB事情にはベストマッチなMTBの新機軸
どんどんトレイルMTBのサスが長くなってきて、エンデューロバイクとの区別がつかなくなってき始めていたところで、そことXCレーサーの間を埋める形で生まれてきたのが「ダウンカントリーMTB」なわけですが、日本のトレイル事情とお財布事情的(何台も揃えられないですからね、普通は)に見ても、かなりベストマッチなラインだと思います。
みんながみんなエンデューロに出るわけでもクロスカントリーに出るわけでもないので、懐が広く、スタンダードにトレイルを楽しむことが出来るという点で、初心者にも胸を張っておすすめできます。
(経験者は語る)MTB初心者はハードテールとフルサスどちらを選ぶべき?遊び方別バイクガイド
正直に言って小生もダウンカントリーMTBが一台欲しいところです。