今年の頭ぐらいから特許取ったとかなんとかでその存在が明らかになりつつあったカンパニョーロの13速コンポーネント「Ekar」がついに正式に発表されました。
これまでスペインのROTORしか成し遂げていなかった1×13(ワンバイサーティーン)
リアのトップは9tとこれまで3Tやその他のサードパーティ製品でしか見られなかった極小スプロケット搭載です。
今日はコレの海外インプレをセットでお送りいたします。
画像は大体こちらから:https://www.bikeradar.com/news/campagnolo-ekar-gravel-groupset/
世界最軽量でもっとも信頼のおけるグラベルコンポーネント(カンパニョーロ談)
総評
「Ekar」13速コンポーネントは信頼性の高い変速性能と素晴らしいブレーキングパフォーマンスで、一気にカンパニョーロを「グラベルの時代」へと押し上げた。
いいところ
13速のスプロケットは素晴らしいギアレシオの幅を実現してくれている。
ラフな路面でもチェーンの暴れが抑えられていて安心できるストッピングパワーは十分なものの、コントロール性の高いブレーキ。
タフなコンディションでも信頼性の高い変速性能
ブラケットフードの形状がグラベルでのコントロール性能を高めてくれている。
悪いところ
ブレーキ中にシフトダウン出来ない。
ブラケットフードのゴムのグリップ性能が高い一方で、素手だと痛い。
左のシフターがドロッパーポストを動かすのに使えない
インプレ
我々サイクリングニュースは幸運にも発売前のEkarのテストモデルを入手することが出来た。今のところ性能に関しては驚きでしかない、テストバイクはよりアドベンチャー向けのフロント38t、リア9-42tの組み合わせだった。
テストの条件
期間:6週間
ライドの回数:16回
距離:967㎞
天候:8℃から25℃、ドライコンディションから極めてウエットなコンディションまで
ライドのタイプ:舗装路、比較的スムーズなグラベル、馬鹿げたレベルのグラベル
変速性能
変速はとてもスムーズで、ボコボコの路面を走っている時でも、素早く、そして正確にシフティングが行えた。
変速はとてもなめらかに行われるのに対して、音は少しうるさいと思うことがあった。
しかし、このよく響く変速音を悪いとは思わないし、少しもガッカリしなかった。
とてもスピードの上がったグラベルで変速を行ったとき、チェーンが隣のギアを確実に掴んだ音がする、というのはとても満足できるものだったからだ。
ディレイラーはギアの飛びが想像していたよりも激しいにも関わらず(9-46tならそうなります)手元の操作をキッチリと伝え、とても良い仕事をしてくれている。
カンパニョーロはロードバイクのコンポーネントしか作ったことが無く、クラッチ式のディレイラーを作るのは全くの未経験であったのにも関わらず、である。
本当にカンパニョーロは驚くべき仕事をしたと思う。ラフな路面でもチェーン暴れをいなし、極めて静かなライディングを演出してくれた。
例え歯がガチガチ言うようなラフな下りでも、木の根っこが至る所に見えているシングルトラックでも、チェーンが落ちるようなことは一度もなかったし、他のメーカーのコンポーネントでは暴れたチェーンが僕のかかとに当たることが度々あったけど、この「Ekar」ではそんなことは起きなかった。
スプロケットのギアレンジも良かった。オンロード、そしてグラベルでケイデンスを保つために必要なギア比をきちんと確保出来ていたからね、ギアレシオが20%増えたというのは本当に驚きだったよ。
最も小さな38T×42tは、地元で有名な「チェーン・ギャング」にで出会わない限りは、どんな急勾配でだって十分に登れてしまうと感じた。
トップの9tはオンロードで十分に満足できるものだったしね。
幅広でフラットなカーボンチェーンリングは思った通り、どんな急峻な登坂でも剛性不足を感じさせなかったし、デコボコしたセクションを高速で駆け抜けるときでも安定感を失わなかった。
クランクの先端に「ブーツ(プロテクターのことです)」が履かせてあるのも、この大きな機材投資を守る、という点でいいものだった。
特にグラベルバイクはジオメトリ的にも低重心で、ホイールベースが長く、クランクヒットしやすいから。
コントロール性能
ブラケットフードの形状が本当によく出来ていると思う。ラフな路面でも安全マージンを取って走れている。
そして「Vari-Cushion(VariableCushioning)」と名付けられたブラケット周りの素材はドロドロのコンディションでも確実なグリップ力を約束してくれた。
一方で、僕はグラベルでも素手が好きだから、ロングライドの後は手ヒリヒリしたけど……。
シフトアップレバーは手のポジションがどこからでも動かせるし、ドロップ部に手を置いている時はエルゴノミクスの良さがしっかりと感じられるほどだった。
シフトダウンに関しては、レバーの動かし方に慣れるまで少し時間がかかったけど、慣れてしまえば気軽に変速できた、慣れるまでは謎に二回レバーを押したり、レバーを押したはずが変速しない「ゴーストシフト」が発生したりしたけど(笑)
1つのレバーで1つのアクションが出来る、というのはグラベルに集中するためにはとても大事なことであると思う。
一方で、少々の面倒があることは否めない、一度に一段しか変速出来ないのは、一度に一気に変速できる電動式になれてしまっている人は少々面倒に感じると思うし、ブレーキとシフトダウンが一緒に出来ないのもそうだ。
これは舗装路では大した問題にはならないと思うが、例えば河を横切るような場面では、ピッチをテクニカルに変更しなければならない、そんな場面では正確な予測をしながらシフトダウン→ブレーキ、の流れに移行せねばならず、どちらを先に行うべきかを常に考えなければならなくなる。
ブレーキ性能
ブレーキレバーのモデュレーションは良い、ブラケットフードでも、ドロップでも、どちらでも正確にブレーキングできるようになっている。
レバーのピボットのおかげで、相変わらず、下りでドロップポジションを持った時にはコントロール性能が上がるようになっている。
レバーの下部がグリップを増すためにテクスチャー加工してある(オプションでもう少しテクスチャーを足したいと思う)、
ブレーキのパフォーマンスも素晴らしい、ブレーキフェードを起こすんじゃないかというくらいブレーキに負荷をかけた場面でも、特に問題は起きなかった。
レバーのフィーリングはしっかりフィードバックを伝えてくれるおかげでどのあたりでブレーキがローターを掴むのかが分かりやすかった。
僕のテストバイクは僕の好み(右前ブレーキ)とは違って左前ブレーキだったけど、ロックしたりはしなかったよ(笑)
結論
軽量化というのは、信頼性・耐久性を犠牲にしてしまうことが多いが、カンパニョーロは軽量化を過度に推し進めることはせず、適切な範囲に収めていると思う。
テスト期間中は常に雨のライド、もしくはウエットなコンディションで、イタリアの雨季やスコットランドのハブまで泥につかるような感じとほぼイコールだったが、耐久性は素晴らしいものであったと感じる。
シフティングはシャープで正確なままだった。
カンパニョーロにとって初めてのグラベル用コンポーネントであるのに対して「Ekar」は興味深く、そして「使える」ものだった。
これなら1ⅹを好むライダーにも十分に訴求できるし、グラベルライダーやグラベルKOMハンターたちにもおススメ出来るだろう。
このグループセットなら、市場の他の製品とも伍することが出来るし、軽量性とギアレシオから比較的ペースの速いライドやグラベルレースにも向いていると思う。
フルスペック、というかお品書き
シフティング:機械式
変速段数:1×13
チェーンリング:38T、40T、42T、44T
スプロケット:9-36t、9-42t、10-44t
ブレーキ:油圧ディスク
Ekarの重量(公称重量です)
ディレイラー:275g
スプロケット:340g(9-36t)390g(9-42t)410g(10-44t)
チェーン:242g(117リンク、C-リンク込み)
BB:50g
エルゴレバー:420g(ペア)
ブレーキキャリパー:110g(前)95g(後)
ローター:157g(160㎜)123g(140㎜)
トータル重量:2385g(1×13、ディスクブレーキ、9-36tの場合)
訳者まとめ:ついに13速の時代が到来
え……まだ11速で消耗してるの? と言わんばかりの技術革新にビックリ、気が付けばもう13速になってます。
ROTORとかあるって自分で言ってたやん! ってツッコミが入りそうですが、メジャーメーカーで13速なのがヤバいですね。
これは来年3月と言われる新型デュラエースは14速じゃないと示しがつきませんな(笑)
ワンバイだとメリットが大きい一方で、ロードだと12速欲しいか? って思いますけど、各社そっちでしのぎを削っちゃってるから仕方ないですね。
超軽量電動油圧コンポ!!2×11速でまさかの1500g!! とかの方が市場の需要もプロからの需要もありそうな気がしますが……