GIANTから新型TCR2020年? 21年? モデルがようやく発表に!~コンパクトロードの思想を貫く~

どうも、せんちゃんです。昨日はエアロハンドルのケーブル内装に失敗したため、歩いていつもの影山輪業さんにケーブル取り付けを依頼してきました。

コロナで緊急事態宣言がなされて一夜明けまして、なにかと暗い話題ばかりですが、本日未明、GIANT社から新型TCRの発表がありました。

正直、既に幾つかのレースでCCCチームが使っているので、真新しさはありませんが、より詳細な情報が出てきたのでご紹介します。

元ネタhttps://www.cyclingweekly.com/news/product-news/new-giant-tcr-launched-lighter-more-aero-and-it-doesnt-have-dropped-stays-453561

より軽く、よりエアロなTCRの第9世代

ロングセラーオールラウンダー「TCR」の新型がついに発表

TCRはこの新型で初代から数えて9世代目となる。

新型は明らかに、軽く、硬く、そしてエアロに進化した。

そしてこれが一番のポイントだが「ドロップドシートステー」を採用していない。

GIANT TCR:ドロップドシートステー不採用から見える設計思想

過去四年間のロードバイクデザインの変化の中ではドロップドシートステーが主流になってきていた。

競合他社も多くがドロップドシートステーの利点に気づき、これを導入してきた。

しかし、GIANTは違う。近年のトレンドに追従することなく、アイコンと言ってもいい「コンパクトロード」の概念を保持している。

このバイクは伝統的なロードバイクに見られるコンパクトなフロントトライアングルを維持し、GIANT社にとって象徴的なスローピングしたトップチューブをも持っている。

これは競合ブランド(例えばスペシャライズドやキャノンデールのような)とは違う。

彼らは新型でドロップドシートステーを導入している。

私がGIANT社にどうしてこのような決断をしたのか訊いたとき、彼らはこう返答した。

これがGIANTに、というかTCRにとって象徴的な遺産だからさ──1995年に初めて誕生し、そして今日まで続く──ここまでこのバイクが成し遂げてきた実績は否定できない。それが同時に重荷でもあるわけだが……

ドロップドシートステーについては、確かにエアロダイナミクスは向上するが、それ以上にライダーの脚が巻き起こす乱気流の方が大きいとわが社は考えているため、採用しなかった。

そして、伝統的なデザインを維持しながらも、性能を最大化することは可能だとも考えている。

三つの大きな変化

新型TCRの変化は大体この三つに収束してくるだろう。

エアロダイナミクスの進歩、バイクの効率の改善、そしてライドクオリティの向上だ。

伝統であり、革新

エアロダイナミクスについて

このバイクの研究期間の大半は、いかにして抜本的な変化抜きに、そして伝統的なデザインを崩すことなくエアロダイナミクスを向上させるかに充てられた。

その結果として、新型は現行のモデルに対して7~8%速いことを示している(40㎞/h走行時、ライダーを模したマネキン使用)。

そしてボトルとボトルケージを付けた状態でも+15°から-15°の間のヨー角で速いことが実験から分かっている。

このエアロダイナミクスについてはスペシャライズドのターマック、そしてサーヴェロのR5と同等であるとした上で、トレックのエモンダより確実に速いとしている。(小生注:こういったオールラウンダーの比較では毎回エモンダが一番エアロでない結果になる、トレックさん……)

こういったエアロダイナミクスの向上は各チューブの形状を見直したことによって可能になった。

新型TCRのチューブは楕円形の後部を切り落としたような形状となっている。これは同社のエアロロード「プロペル」に倣った構造だ。

このバイクで最も空気抵抗を削減しているのはフォーク、そしてヘッドチューブだ。そしてダウンチューブとボトムブラケット部が太くなったことで同時に剛性も向上している。

この辺がエアロダイナミクスを向上している

剛性の向上

GIANT社はステアリング周辺の剛性の向上を謳っている。

これまでの「オーバードライブ2」を再設計した結果として32%剛性が向上した。また、フォークのエアロダイナミクスの最適化の副産物としてディスクブレーキ仕様では32㎜のタイヤクリアランスを有することになった。

軽量化について

同時に、バイク自体の重量も軽くなっている。1

40gの軽量化だ。65gは塗装で削減した。

「シンライン」と呼ばれる仕上げにより、塗膜の層は8から僅か3まで減少した。

そして新しいレーザーカッティングツールの導入も工程の中での公差を減少させた。最も重量に関わってくるエリアの150の小さなカーボンプリプレグのレイアップをロボットに任せることが可能になったことでさらに重量は低減された。

「シンライン」ペイントはトップグレードのSLシリーズに用いられる。

GIANT社によれば、新型はMサイズでターマックよりも105g、サーヴェロのR5よりも322g軽く、トレックのエモンダからは僅かに17gの重量増に留まる。

GIANTは首尾一貫した製造を誇りとしており、カーボンプリプレグも輸入することなく自社で生産している。新型にはハイモジュラスカーボンが用いられていることで剛性の向上と軽量化を同時に成し遂げた。

ハイエンドモデルであるTCR「SL」シリーズでは前作と変わらずインテグレーテッドシートポストを採用しており、ライダーの身長によってカットする必要がある、だが一方で二種類の異なる長さのシートポストクランプを付属させることでリセールバリューをも高めている。(小生注:流石GIANT、細かいところまで気が利く)

GIANT新型TCRのアッセンブル

ハイエンドモデルの貫禄

ハイエンドモデルのTCRAdvancedSLシリーズにはリムブレーキ、ディスクブレーキ仕様ともに姉妹ブランドである「Cadex」の42㎜ハイトのカーボンホイールを採用している。チューブレスタイヤのみの対応となる内幅19㎜のリム、先代がよりも2㎜広がった。

このリムの利点はスリムなプロファイルと軽量性であり、チューブレスタイヤしか使えない、という欠点を大きく上回る。

GIANTはチューブレスタイヤに関する技術についても折り紙付きであったことを思い出してほしい。

そしてこのホイールの開発において、同社はペダリング時のホイールテンションが大きな問題であることに目を付けた。

そのため、このホイールでは異なる長さ、異なるテンションのスポークが交差し、乗車時にスポークテンションが均一になるように調整されている。ちなみにハブも自社工場で生産されており、ステンレスベアリングからセラミックベアリングへの変更が可能となっている。

CADEXの新型ホイール「CADEX36 DISC」の海外インプレ(翻訳記事)ヒルクライマー必見!?

ハイエンドモデル以外はGIANTのslr1、またはRR2がアッセンブルされる。

GIANT TCR2020、2021のインプレ

レースバイクとしての性能とユーザーフレンドリーさの融合

まず最初にこのバイクに乗って感じたことは、このバイクには全く無駄な重量がなく、どんなに小さな入力に対しても確実な反応性を持っている、ということだ。

私が試したのは56サイズのTCR Advanced SL Discだったが僅かに7㎏を超える重量だった。

ここまでのところで何の不満も感じない。

私のテストバイクは最近手元にやってきたもので、ハードなライドはまだ行っていないけれど……。

私はハンドルバーの下に一つだけスペーサーを入れた。他のテストバイクやいつも乗っているS-WORKSターマックとハンドル高を合わせるためだ。

とりあえず私が行った短距離のライドではアグレッシブすぎるポジションにはなっていない。

インテグレーテッドシートポストには小さな驚きが漏れたが、私が三年間保っているサドル高を伝えてあるので、キチンと合わせて貰っていた。

しかし、一方で私はもしかしたら計測が雑でサイズの合っていないバイクに金を払わされるのではないかということが気になって眠れないんじゃないかと思っていたことは正直に言っておく。

勿論サドル高に関しては完璧にセットアップしてあって、何の心配も要らなかったわけだが、GIANTが私の心配を見越してか同かは知らないが、異なる長さのシートクランプを送ってくれていたのは良かった。

これはサドル高にこだわりを持っている人々にとっては朗報だろう、硬いサドルから柔らかいものへ、古くへたったサドルから新しいサドルへ、そして自身のポジションを煮詰めるためにミリ単位の調整を欠かさない人たちもきっと喜ぶ。

私はこのバイクが「何でも出来る」バイクだと世辞を言うつもりはない。

エンデュランスバイクのように滑らかに路面を走るわけではないからだ。

このバイクはやはりレースバイクである。

もちろん必要最低限の快適性はあるが、このバイクにはただ「速い」という感覚が存在する。自分のバイクに対する入力がフレームを伝わっていくのを感じると同時に、大きめの穴をよけそこなったことも感じられる。

新しいハンドルがこういった衝撃を伝えてきているような気もするが、もっと長い距離を走らないと最終的な判断を下すには至らない。

まとめ GIANTが描くコンパクトロードの理想形

日本ではどうにも「安物」のレッテルを張られがちなGIANTだが、このバイクの発表で改めてその技術力の高さを証明したと言えるだろう。

ターマックやR5と言った「エアロオールラウンダー」にも引けを取らない空力性能を保持しながら、それでいてエモンダに肉薄する軽量性、これらすべてを自社のアイデンティティーである「コンパクトロード」に詰め込むことで、マーケットに追従するのではない独自のバイクとしての立ち位置を確保した姿は潔く、カッコいい。

こんなバイクに一度は乗ってみたいものだ。そう思わせる思想がある(相変わらずロゴが気になるけど……)。

機材提供、電通案件、パトロン、待ってます!(いつもの)

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