市場の流行はエアロダイナミクスと軽量性のバランスをとった「エアロオールラウンダー」だと思っていましたが、どうにもこの頃、エアロダイナミクスをさらに煮詰めて再設計する流れが来ているように感じられます。
こないだのORBEAの新型なんかもそうですし
ORBEAの新型エアロロードらしきものがブエルタにて目撃される!ORCA AERO2022モデルか⁉
というわけで今回は何度聞いたか覚えていない「世界最速」かもしれないバイクの紹介です。
https://www.bikeradar.com/news/ribble-ultra/?image=3&type=gallery&gallery=5&embedded_slideshow=5
「世界最速のエアロロード」
Ribbleは、エアロに最適化されたフレームと、上部に「ウェイク生成」バルジ形状を持った斬新な一体型ハンドルを備えた新しいエアロロードバイクであるUltraを発表しました。
これらのバルジ(ふくらみ)は、一般的なエアロハンドルバーと比較して、さらに抵抗を減らすためにライダーに当たる空気の流れを操作すると言われていますが、これまでに市場で見てきたものとは異なり、Ribbleはその効果が大きいと主張しています。
Ribbleは、「世界最高のエアロダイナミクスを持ったフレームセットを作成する」ための簡単な説明とともに、3年間の集中的なCFD、風洞、および実世界の開発に投資してきました。
その結果、Ultraは、全体に深く切り取られた翼型のチューブを備え、高レベルの統合を実現し、すべてのラインナップでエアロホイールとコンポーネントを備えています。
実際の空力性能について
速度については、Ribbleは、UltraがRibbleのEndurance SL Discロードバイクよりも「平均5度と10度のヨー角、22mph(時速換算で35.41㎞/h)で11.6wの低減」と、主張しています。これにより40kmで75.1秒速くなります。
アマチュアにとってもプロにとっても良いことを保証するために、Ribbleは、Ultraは22mph(10メートル/秒)と29mph(13メートル/秒)の2つの速度で風洞実験を行っており、低速での抵抗の低減の大きさを示しています。
Ribbleの他のロードバイクと同様に、コスパは良好です。
Shimano 105 R 7020とLevelカーボンホイールを搭載した完成車で£3,199≒480,200円~となっています。
エアロダイナミクスを追求した設計
ご想像のとおり、エアロダイナミクスが最適化されたフレームとフォークは、モダンなエアロロードバイクのすべての特徴を備えています。
フレームには、深く切り取られた翼型チューブ、細いヘッドチューブ、そしてもちろんドロップシートステーがあります。
UCIの規則では、最大80mmのフォークブレードが許可されていますが、Ribbleは68mm×15mmのフォークブレードに落ち着きました(56mmのブレードもテスト済み)。
Ribbleのテストでは、80mmのフォークブレードが10度のヨー角より下でよりエアロであることが示されましたが、より広いヨー角でパフォーマンスが劇的に低下したため、このサイズで落ち着きました。
ダウンチューブの下部も劇的に広がり、ボトルの周りの空気を整流する効果を期待できます。
大多数のライダーは通常、ライドの際に少なくとも1本はボトルを持っていくことでしょう(小生もそうです)。
この辺は最近のバイクだとどれも考慮しているポイントですね。
最近話題のバイクだと「DOGMA F」なんかもそうです。
DOGMA F 2022年モデルの海外インプレ~東京オリンピック金メダルを獲得した究極のオールラウンドバイク~
ダウンチューブは、キャノンデールのSystemSixとアプローチが似ていますが、ヘッドチューブとダウンチューブの間の「翼」部分のテーパーはより特徴的です。
フォークも再設計の対象となり、複数の異なる翼型プロファイル、チューブの深さ、および左右の幅がテストされました。
エアロダイナミクスを煮詰めた設計
Ribbleは、狭いフォークと広いフォークの両方の設計をテストしたと述べていますが、フォークブレードをフロントアクスルの幅に合わせることが最適な解決策であることが判明しました。
実際のところ、Ribbleは、フォークに対して5度のヨー角を超えたときに揚力/負の抗力(またはセーリング効果)を生成し始めると主張しています。
左のフォークレッグは、ブレーキキャリパーを空気の流れから隠すように形作られているため、通常は空力効率が最適化されていないコンポーネントに対する空気の流れが改善されます。
シートステーもフォークブレードに沿って配置され、低いヨー角での抗力をさらに低減しました。
ミニコラム:「ヨー角」って何?って人のためのそこはかとなくわかる解説
ヨー角は「サイクリストに対する風の迎え角」です。
真っ直ぐな向かい風は0度のヨー角であり、横風は風がどちらの側から来ているかに応じて正または負の値を持ちます。
速くなればなるほど、通常はヨー角が小さくなり、その逆も同様です。
興味深いことに、Ribbleは、フォークブレードがホイールのかなり広い位置に立って、ライダーの脚が回ることによって作り出された伴流のために、幅の広い「アウトボードデザイン」(Hope HB.Tトラックバイクに見られるような)を考慮しました。
5度未満のヨー(トラックの高速、低風の状態に典型的)未満で検出可能なアドバンテージがありますが、一般のサイクリストがより頻繁に経験するのはより高いヨー角での抵抗です。
幅広い業界トレンドに従って、Ultraフレームセットは28mmのロードバイクタイヤを中心にエアロダイナミクスを最適化していますが、より快適にする必要がある場合は、最大で32mmのタイヤクリアランスがあります。
ホームメカニックは、UltraのBBがネジ切りタイプであることを知ってワクワクするでしょう。
じつはこのハンドルが「ヤバい」
フレームセットとは別に、バイクの主要な空気抵抗を削減しているパーツは、新しい特許出願中のハンドルである「UltraBar」です。
ウルトラバーはすべてのケーブルを内装しますが、それははじまりにすぎません。 ハンドルバーはライダーの前にあるため、バイクで最初に空気の流れにぶつかります。
これは、自転車のハンドルバーがその後、後ろにあるライダーの体の空気の流れに影響を与えることを意味します。
Ribbleは、ハンドルだけが空気を切り裂くのではなく、ライダーの周りの空気の流れを操作するようにウルトラバーを設計しました。
この気流の操作は、Ribbleが「ウェイクジェネレーター」と呼ぶものを介して実現されます。
一言で言えば、ハンドルバーの上部はステムに最も近い中央部分で劇的に膨らんでいます。
つまり、従来のエアロハンドル(上部が細く、平らになる傾向がある)と比較して、ハンドルの後ろの空気の流れに大きな影響を与えるということです。
これは明らかに、ライダーがいない風洞実験では、従来の形状のエアロハンドルよりも多くの空力抵抗を生み出すことを意味します。
ただし、重要なのは、ライダーが乗ると状況が反転すると言われ、ライダーとバイクのシステム全体の抗力が減少することです。
UltraBarを装備したUltraSLRは、ライダーが乗った状態で現行のレベル5ハンドルバーを装備した同じバイクよりも「22mphで40km走ると20.5秒速い」と主張しています。
これに加えて、ウルトラバーは33cm、36cm、または38cmの幅でのみ利用可能です(ブレーキフードの中心から中心-ドロップは両側で2cmフレアします)
これは、既製のバイクと比べると狭いです(たとえば、56cmのフレームには通常、42cmのハンドルが付いています)
この考え方は空力的に優れたポジションに基づいています(42cmのハンドルバーから36cmのハンドルバーに切り替えると45km/hで最大12w節約できます)。
より広いハンドルを好むライダーは同社のレベル5ハンドルとも互換性があるためそちらを使えばよいのです。
最も狭い33cmの幅は、RibbleがスポンサーとなっているプロチームであるRibble Weldtite Pro Cycling and Drops–Le Colのために特別に設計されたもので、140mmのステム長と組み合わせて、トッププロが好むような長くて狭いライディングポジションを実現します。
ただし、イノベーションはそれだけではありません。
丸い23.5mmのブレーキレバークランプの形状制限から脱却するために、Ribbleはブレーキレバーをウルトラバーに取り付けるための新しいダイレクトマウントソリューション(これも特許出願中)を設計しました。
このデザインは、ブレーキレバーに見られる従来の金属製クランプバンドを廃止し、代わりにブレーキレバーがハンドルバーに直接ボルトで固定されるのを確認します。
つまり、ウルトラバーのクランプ領域は、標準の23.5mmブレーキレバークランプに対応するために22.2mmで丸みを帯びている必要がある、標準のハンドルバーよりも空力的にすることができます。
このシステムは、標準的なブレーキレバーで動作すると言われており、形状が変更された丸くないドロップは、より空力的で人間工学的であると言われています。
Ribbleはまた、バーテープを必要としません。
一種の滑りにくい塗料でドロップ部分を覆い、小さな空気抵抗削減を実現しました(バーテープをつけると、前方投影面積が増えるため、わずかですが測定可能な量のドラッグが増えます)
ラインナップ
Ribbleの現在のEnduranceと同様に、Ultraには2つのオプションがあります。
まず、最上位のUltra SLRがあり、次に安価なUltraSLがあります。
どちらのバージョンもディスクブレーキのみです。
#savetherimbrakeと主張するファンには申し訳ないのですが……。
Ribbleは、2つのバージョン(どちらも東レT1000 / T800カーボンファイバー製)の正確な違いについては気の毒ですが、まだそれほど詳しいことは分かりません。
しかし、フレームの型は同じです。
ただし、Ribbleは、各バージョン間で150gの重量差があることを確認しています。塗装されたMサイズのUltraSLフレームの重量は1,200gと言われていますが、同等のUltra SLRは1,050gです。
これにより、Ultra SLRの完成車重量は、ハイエンドモデルで7.6kgであり、現代的なエアロロードバイクと比肩します。
明確な違いはすべてのSLR完成車が上記の革新的なウルトラバーを備えているのに対し、SL完成車はレベル5エアロハンドルを備えていることです。
Shimano 105R7020とLevelカーボンホイールを搭載したUltraSL完成車の価格は、魅力的な£3,199から始まります。
Ultra Barが必要な場合、Ultra SLRの価格はShimanoUltegraR8020とMavicKsyrium 30ホイールを使用したビルドで£3,899から始まり、Shimano Dura-Ace R9170Di2とEnveFoundation65カーボンを使用したビルドで£7,299に上昇します。
トライアスロン専用のUltraSLR完成車もあります。
価格は6,599ポンドで、トライアスロン専用のシートポストとコンポーネント、Shimano Ultegra R8070 Di2、Ribbleの素晴らしい3本スポークカーボンホイールが付属しています。
完全な完成車の詳細はRibbleのWebサイトにあり、正確な仕様はRibbleのオンラインBikeBuilderツールを使用してさらにカスタマイズできます。
ライダーは、Ribbleのカスタムカラースキームを介してカスタムペイントを選択することもできます。
他の自転車と同様に、在庫とコンポーネントの不足が自転車業界に上から下まで影響を及ぼしているため「実際にはいつ購入できるのか」が、問題になります。
RibbleはBikeRadarにUltraSLとUltraSLRを今すぐ予約できると語り、自転車は2021年10月に出荷を開始します……
が、もちろんコンポーネントの入手可能性によって異なります。
まとめ:人馬一体のアプローチで今度こそ「世界最速」なるか
今回は本当に面白いロードバイクが出てきましたね。
今まであまりライダー自体の空力に触れてきたブランドはありませんでしたが、Ribbleはそこんとこを煮詰めて「世界最速」を目指してきました。
いちおサーヴェロのV字ステムなんかはその辺考えてあった気がしますが(自分のバイクのことなので物覚えがよろしい)
さてさて、本当に速いのはいったいどのバイクなのかが気になるところです。
一応現時点で
「最速」はCANYONのAEROAD
CANYON AEROAD CFR (キャニオンエアロード)2021モデルの海外インプレ
次点でキャノンデールのシステムシックス
記事ないのが悲しい……書くか……
3番手に小生も駆るサーヴェロ「S5」
サーヴェロ「S5」苦節1か月の果て……ついに完成しました! 紹介とファーストインプレッションです!
ですが、ほかにも最速候補には
UCI規定を限界まで追求した新型エアロロードCube lightning C:68X
なんかもあります。一度どっかで最速決定戦をやってもらいたいところです。